試練を乗り越えて
コロナ禍で始まった2020年代
2020年1月になり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が徐々に拡大、2月に入り企業でも感染拡大を防止するためテレワークや時差出勤を呼びかける動きが広がっていく。感染者の世界的な増加はとどまるところを知らず、国内でもイベントの中止・観光施設の臨時休業・教育機関の臨時休校などが決定され、渡航の自粛や入国制限も開始されている。3月10日には政府が「歴史的緊急事態」に指定している。翌4月3日には入国拒否対象地域の拡大、4月7日には東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に緊急事態宣言が発出され、16日には全国が対象となるなど未曾有の事態となった。
西急でも勤務形態の変化や休校措置などによる定期旅客の減少が見られたが、インバウンドの消滅および緊急事態宣言発出による外出自粛要請等の措置により定期外旅客は30%以上減少し、運輸事業は大打撃を受けた。また、社会活動の停滞により運輸事業以外にも観光・小売・不動産・流通・サービスの全事業で減収減益となった。
その中でも収益増につなげようと、テレワークや在宅勤務向けのコワーキングスペースの開設をはじめ、利用率が激減したホテルでは、いわゆる「密」を避けるためのデイユース利用促進、小売事業と流通事業の連携による個人宅配サービス開始など、コロナ禍の日常生活に対応した新たな取り組みが展開された。
運輸事業での減便措置や臨時ダイヤでの運行については、緊急事態宣言期間中は相互乗り入れ区間での運行本数の調整と全日土休日ダイヤでの運行を実施することによる実質的な減便措置が取られた。2020年は車庫公開等のイベントもオンラインでの開催となり、大晦日の終夜運転も中止されるなど「寂しい一年」となった。
2021年に入ってからも、沿線の2府4県では度々緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が発出されたことで、各事業とも前年度よりも減収減益となり苦境から抜け出せずにいた。10月1日にようやく沿線各府県での緊急事態宣言が解除されたことで、運輸事業でも利用者数が回復しつつあった。また、その他各事業でも回復の傾向が見られた。とはいえ、2021年度第三4半期も2019年度同期と比較して、運輸事業では定期および定期外旅客は25%前後の減少となっており、回復には程遠い状況となっている。時節柄様々な制限がある日常だったが、11月6日に2年ぶりに車庫公開が開催(ただし会場への来場は抽選制)され、徐々にではあるが主催イベントが再開されていった。また、大晦日の終夜運転も2年ぶりに復活している。
2022年に入り、3月21日までですべての都道府県でまん延防止等重点措置が終了し、感染対策や医療体制の維持等を継続しつつも、経済活動の本格的な再開を模索する時期に入り、観光以外の外国人の受け入れが段階的に再開された。また、5月の大型連休は「3年ぶりの行動制限なし」となったことから、沿線もかつての賑やかさが戻りつつあった。5月3日から5日にかけて、事前応募制ではあったが3年ぶりに正雀車庫・八日市車庫・佐屋車庫において車庫公開イベントが開催されている。
ホーム柵設置へ向けた動き
2022年に入り、千里線の関西大学前駅において、西急で初めて可動式ホーム柵が設置された。設置の経緯は、相互直通運転を実施しているOsaka Metro堺筋線において、2022年度中に全駅で可動式ホーム柵の設置を計画しており、西急でもOsaka Metroに合わせて、2024年度までに千里線全駅への設置が決定されたことによる。千里線での運用実績により、本線のうち乗降客数の多い駅および支線への乗り換えなどで混雑が予想される駅への設置が検討されているが、その整備費用は1番線あたり数億円であり、国や地方自治体による整備費用の一部補助を受けたとしても、設置は慎重にならざるをえないのが実情である。
その前段階として、ホームからの転落および列車との接触事故を防止を目的とした、CPラインおよび内方線付き点状ブロックについては、2023年度中に可動式ホーム柵未設置のすべての駅で設置が完了予定となっている。