西日本急行株式会社(にしにっぽんきゅうこう、英: Nishikyu Corporation、以下西急)は、兵庫県・大阪府・京都府・滋賀県・三重県・愛知県の2府4県で鉄道事業を行う鉄道会社であり、日本の大手私鉄の一つに数えられる。西急グループの中核企業であり、鉄道事業を基幹とした運輸・観光・小売・不動産開発などの多角化事業において、京阪間および京滋間を勢力圏としている。
概要
一般的には西急(にしきゅう)の略称で知られており、公式な通称でも使用されている。京阪神では、在阪私鉄について「○○電車」の呼称が浸透していることから、「西急電車」と呼称されることがある。他社線における乗換案内では「西急線」と呼称されることが多い。
英文社名は、西日本急行電気鉄道(以下旧西急)時代は Nishinippon Express Railway Co., Ltd. だったが、1972年4月1日の西日本急行への商号変更を機に Nishinippon Express Co., Ltd. に変更された。2022年4月1日の商号変更50周年および創立100周年を機に再度英文社名が変更され、現在の Nishikyu Corporation となった。ただ、掲示物などで一般的に使用される英文表記については、従来より一般的に Nishikyu の表記を使用していることから、英文社名変更による大きな影響はない。磁気カードおよび駅番号の符号ではNEが現在でも使用されているが、これは導入時期が英文社名 Nishinippon Express だった頃の名残である。
成り立ちとしては、京阪電気鉄道(以下京阪)による京阪間の高速新線建設用の別会社として設立された新京阪鉄道(以下新京阪)、同じく京阪が構想した大津~名古屋間の名古屋急行電気鉄道(以下名急)、阪神電気鉄道(以下阪神)が建設した阪神間の増設線によって構成される。1939年3月21日の三宮~名古屋間の相互直通運転開始を経て、陸上交通事業調整法を根拠に1943年4月1日に新京阪が名急を吸収合併する形式で、西日本急行電気鉄道として商号変更、同年10月1日に阪神から増設線を譲受することで一本化された。
上記の経緯から、設立日は前身の新京阪鉄道設立日である1922年(大正11年)6月28日としており、本社事務所と本店所在地は大阪府大阪市大淀区天神橋筋6丁目の新京阪ビルディングである。
鉄道路線は、本線(三宮~名古屋間:187.8km)、千里線(浪花町~北千里間:14.1km)、嵐山線(桂~清滝間:8.2km)、湖東線(市辺~近江八幡間:6.3km)、鋼索線(二の鳥居~愛宕遊園間:2.2km)の計218.6kmで構成される。このほか、索道事業として索道線(愛宕遊園~愛宕神社間:0.7km)を運営している。
社章とマーク類
社章は1943年4月1日の西急発足時に制定された。大阪市と京都市の市章を図案化した新京阪鉄道の社章を継承、新たに神戸市と名古屋市の市章を図案化して追加することで当時の六大都市のうち四都市を結ぶ広大な路線網を示し、周囲の円は車輪を示すとともに、「業務の完全かつ円滑な遂行」の意味が込められている。CIマーク制定後も正式な社章として使用されており、運輸業の制帽やバスおよび鉄道の営業車両などに用いられている。
エンブレムとは、西急の鉄道車両に掲出されているシンボルマークである。1948年1月1日の臨時超特急運行時に、戦後復興への意気込みを込めて正雀工場の有志により製作された私製ヘッドマークが原案で、鳥の飛翔する様子をデザインしたものである。
1954年の1000系(初代)営業開始に際し、私製ヘッドマークを図案化したものがエンブレムとして制定された。正面から見た図案は公式には「甲号」と呼称され、特急定期運行再開時に、特急車両に掲出されるようになった。横から見た図案は「乙号」として特急車以外の車両用として新たに図案化され、ファンの通称として前者は通称「両翼マーク」、後者は「片翼マーク」と呼ばれている。
特に「乙号」は認知度の高さから、1955年頃からから準社章の扱いで使用されはじめ、旧ロゴタイプとともに、一般掲示物およびパンフレット類でも使用されていた。CI導入に伴いコーポレートマークが制定されると、再び鉄道車両に限定して用いられるようになった。この時にエンブレムの掲出終了の可能性が噂され、西急が「今後も意匠の変更や使用終了の予定はなく、鉄道車両のブランドとして次世代にも受け継いでいく」と広報する事態になったことは有名である。
コーポレートアイデンティティ
西急設立50周年を迎えた1993年4月1日にコーポレートアイデンティティ(以下CI)を導入、当時のコーポレートスローガン「あなたと素敵な一日を」とともにコーポレートマークが制定された。鉄道車両のエンブレムをもとに、西急の英文社名である Nishinippon Express のNとEを用いて鳥の飛翔を図案化し、「未来への飛翔」というブランドステートメントを表現したものとなっている。
コーポレートカラーはミッドナイトブルーをメインカラーとして「信頼」「威厳」「力強さ」を示し、サブカラーとしてカーマインが使用される。どちらも従来より刊行物その他で使用されていたが、CI導入時に正式に制定された。